東京高等裁判所 平成9年(行ケ)342号 判決 1998年11月18日
兵庫県尼崎市塚口町4丁目6番15号
原告
藤原明
東京都千代田区霞が関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 伊佐山建志
指定代理人
鈴木公子
同
田中英穂
同
田中弘満
同
小林和男
主文
特許庁が、平成7年審判第9292号事件について、平成9年11月25日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、昭和61年5月30日、名称を「伸縮する建具」とする発明(後に「建具」と補正、以下「本願発明」という。)につき、特許出願をした(特願昭61-126981号)が、平成7年3月6日に拒絶査定を受けたので、同年5月2日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を、平成7年審判第9292号事件として審理した上、平成9年11月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成9年12月14日、原告に送達された。
2 本願発明の要旨
枠と該枠内に嵌め込まれた仕切り板とからなる建具であって、前記枠内に嵌め込まれた仕切り板は複数枚とすると共に各仕切り板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いることを特徴とする建具。
3 審決の理由
審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願発明が、実願昭52-175096号(実開昭54-100455号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)に、記載された発明(以下「引用例発明」という。)と同一であるから、特許法29条1項3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないとしたものである。
第3 原告主張の取消事由の要点
審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願発明と引用例発明との対比の一部(審決書4頁14行~6頁11行のうち、「即ち、縮めると、左又は右端にガラス戸を集めることになるものである。」(同6頁6~8行)を除く部分)は、認めるが、その余は争う。
審決は、引用例発明を誤認した(取消事由)結果、本願発明と引用例発明とが一致すると誤って判断したものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 引用例発明の誤認(取消事由)
審決は、本願発明と引用例発明との対比判断において、「引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”は、・・・即ち、縮めると、左又は右端にガラス戸を集めることになるものである。」(審決書6頁2~8行)と認定したが、誤りである。
すなわち、本願発明において、仕切り板が伸縮自在であるとは、1つの建具で複数種類の建具があるのと同様な役割を持たせるという発明の目的や効果からみて、枠内の一端に集められることであり、その集められた仕切り板の存在が、建具の一部として希薄になる程度に十分に縮むことを意味している。つまり、本願発明の仕切り板は、一枚物で形成されており、使うものは伸ばし、使わないものは縮めて、枠の一端に集めるものである。具体的には、伸縮する構造又は伸縮する部材で構成された仕切り板を、スライド式、折りたたみ式、その他の方法で伸縮させるものである。
一方、引用例発明における2枚のガラス戸は、伸縮自在とはいえず、枠内の一端には集めることができないものであって、それを開いても、依然として窓枠内の大きな範囲(半分)を占めた状態が残るから、その存在が無視され、あるいは気づかれなくなる程度にはならず、常に建具の一部となってしまうものである。この点について、審決は、ガラス戸をスライドさせて開けることを、縮めると同義とする(審決書6頁6~8行)が、ガラス戸は、左右にスライドして開閉は自在であるが、伸縮はしないし、することもできないから、誤りである。
したがって、本願発明の仕切り板が、伸縮自在であるのに対し、引用例発明のガラス戸は、伸縮自在といえないから、審決が、引用例発明の“内外のガラス戸”は本願発明の「仕切り板」に相当すると判断した(審決書6頁11~17行)ことは、誤りである。
2 審決が、「引用例に記載された発明の“ブラインド”は、伸縮自在で、使用するときは伸ばして用いるものであることは明らかであるから、引用例に記載された発明の“・・・ブラインドを左右方向に寄せ集めることができる”は、本願発明の「各仕切り板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる」に相当する。」(審決書6頁8~17行)と認定したことは、認めるが、本願発明は、前示要旨記載のとおり、「仕切り板を複数枚とする」ものであるから、引用例発明のブラインドが本願発明の仕切り板に相当するとしても、これのみでは、引用例発明と本願発明が同一となるものでない。
そうすると、審決が、「本願発明と引用例に記載された発明とに構成において相違するところはない。」(審決書6頁18~19行)と判断したことは、誤りである。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は、理由がない。
1 取消事由1について
本願発明の仕切り板の伸縮自在の一態様である、「スライド式により縮める」とは、複数の板に分割された仕切り板を、スライドさせることにより、板を横に並べて伸ばした状態から、重ね合わせ枠内の一端に集めることを意味するものである。したがって、本願発明において仕切り板を使用するときは、板をスライドさせることにより複数の板を横に並べて、仕切り板を伸ばした状態とし、使用しないときは、板をスライドさせることにより複数の板を重ね合わせて枠の一端に集め、仕切り板を縮めた状態にする態様を含むものである。
これに対し、引用例発明は、2枚のガラス戸を合わせた全体が、本願発明の「仕切り板」に相当するところ、2枚のガラス戸が横に並んだ状態は、仕切り板を伸ばした状態であり、ガラス戸をスライドさせて開け、2枚のガラス戸が重なって窓枠の左又は右端に集められた状態は、仕切り板を縮めて左又は右端に集められた状態であるから、審決が、ガラス戸をスライドさせて開けることをもって、縮めると左又は右端にガラス戸を集めることになると認定した(審決書6頁6~8行)ことに、誤りはない。
原告は、本願発明の仕切り板が、一枚物で形成されている旨主張するが、本願発明の要旨は、明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、仕切り板が一枚物で形成されている構成に限定されないから、原告の主張は、失当である。
なお、仕切り板の構造において、仕切り板の各葉が連結され一枚物となっており、スライドして全体として伸縮可能となるものは、本願の出願前から周知である(例えば、実開昭51-61744号公報(乙第1号証)、実開昭55-178591号公報(乙第2号証)参照、以下、両公報を「本件各公報」という。)。
2 以上のとおり、引用例発明のガラス戸は、本願発明の仕切り板に相当するものであり、しかも、引用例発明のブラインドが本願発明の仕切り板に相当することは、原告も認めるところであるから、審決が、本願発明と引用例発明との構成において相違するところはないと判断した(審決書6頁18~19行)ことに、誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(引用例発明の誤認)について
審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願の明細書に「使用しないときはスライド式により縮めて枠の一端に集め、使用するときは枠内に伸ばして用いる伸縮自在の仕切り板が例示されている。一方引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”は、左右に開閉自在、即ち、本願発明について例示されたものと同様に左右にスライドさせるものであり、閉じた状態、即ち、窓枠内に伸ばされた状態のガラス戸をスライドさせて開ける」(審決書5頁19行~6頁6行)ものであることは、いずれも当事者間に争いがない。
原告は、審決が、本願発明と引用例発明との対比判断において、「引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”は、・・・即ち、縮めると、左又は右端にガラス戸を集めることになるものである。」(審決書6頁2~8行)と認定したことが誤りであると主張するので、以下検討する。
まず、本願発明の仕切り板について、本願明細書(甲第2、第4号証)には、「1つの建具を用い、該建具の枠内に嵌め込まれる仕切り板を複数にして、且つその仕切り板が夫々伸縮できるようにする。そして使用しない仕切り板は縮めて枠の左、右端或いは上、下端等、枠の一端に集め、使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる。このようにして、四季、寒暖等に応じ快適な居住に則した、異なる状態の家具が1つの建具を用いて容易に得られるようにしたものである。」(甲第4号証明細書1頁22~2頁3行)、「仕切り板2は複数枚の仕切り板2a、2b、2cとし、且つ各仕切り板2a、2b、2cは夫々、伸縮自在とする。そして、仕切り板2a、2b、2cのうち、使用するものは枠1内に伸ばして用いる。使用しない他のものは縮めて枠1内の一端に集める。」(同2頁7~10行)、「仕切り板2a、2b、2cのうち、使用しない仕切り板は折りたたみ式、スライド式等により縮め、左、右端に又は上、下端等、枠1の一端に集めるものである。」(同2頁15~17行)、「四季、寒暖等に応じて、複数の仕切り板の内必要な仕切り板だけを枠一杯に伸ばし、他は縮めて端に集めておくことで、選ばれた仕切り板がその時のその建具の実質的な仕切り板となって、相応しい役割を果たすことができる。」(同3頁3~6行)と記載されている。
これらの記載によれば、本願発明の複数の仕切り板は、それぞれ折りたたみ式、スライド式等により伸縮自在であり、縮めると左右端又は上下端等の枠内の一端に集まり、伸ばすと枠内一杯に伸びる構成と認められ、縮めて集めた状態にある仕切り板は、仕切り板としての機能を無視できる程度になることから、使用するために選ばれて伸ばされた仕切り板が、その時の建具の実質的な仕切り板の役割を果たすという作用効果を達成するものである。
これに対し、引用例(甲第3号証)には、引用例発明のガラス戸について、「壁面に対して内外両側面にガラス戸を設け、少くとも内側面ガラス戸を開閉自在とする・・二重窓。」(同号証1頁5~9行)、「第1図に示す如く10は壁面に嵌め込まれる窓枠であつて、その採光部の内外両側面にガラス戸11、12を設けてほぼ気密状の構造とし、そしてその少くとも内側面は開閉自在なガラス戸11とする。」(同3頁4~7行)と記載され、図面第1図には、内外のガラス戸11、12が、それぞれ左右に開閉する2枚のガラス戸からなる構成が図示されている。
これらの記載及び図示によれば、引用例には、窓枠内の内外両面に2枚のガラス戸を設ける二重窓が示されており、少くとも内側面ガラス戸は、左右に開閉自在とされるから、このガラス戸を開けた状態では、スライドさせた1枚のガラス戸を窓枠内の左又は右に寄せ、他方のガラス戸の上に重ねて集めることができるという、極めて一般的なガラス戸の構成が示されているものと認められる。そうすると、引用例発明のガラス戸は、スライドさせて開閉自在である本願発明の仕切り板に相当するものと認められるが、ガラス戸の1枚を左又は右にスライドさせて他方のガラス戸の上に重ね集めた状態では、窓枠内の2分の1相当の面積を占有するから、本願発明の仕切り板のように「縮めて前記枠内の一端に集める」状態とは認められず、しかも、仕切り板として無視できない存在として機能するから、このような引用例発明では、使用するために選ばれて伸ばされた仕切り板のみが実質的な仕切り板の役割を果たすという、本願発明の作用効果を達成し得ないことが明らかである。
被告は、引用例発明の2枚のガラス戸が横に並んだ状態が、仕切り板を伸ばした状態であり、ガラス戸をスライドさせて開け、2枚のガラス戸が重なって窓枠の左又は右端に集められた状態が、仕切り板を縮めて左又は右端に集められた状態であると主張する。
しかし、前示のとおり、引用例発明の2枚のガラス戸の一方をスライドさせて他方の上に重ね合わせ、窓枠内の2分の1相当の面積を占有する状態は、ガラス戸を「縮めて前記枠内の一端に集める」ものといえないことが明らかであり、また、このようなガラス戸の状態では、本願発明の有する使用するために伸ばされた仕切り板のみが実質的な仕切り板の役割を果たすという作用効果を達成することが困難であるから、被告の主張は、採用することができない。
また、被告は、本件各公報(乙第1、第2号証)に基づき、仕切り板の各葉が連結され一枚物となっており、スライドして全体として伸縮可能となるものが、本願出願前から周知技術であると主張する。
しかし、本件各公報に記載された仕切り板に関する技術内容は、引用例発明の解釈のための周知の事項を開示したものではなく、新たな引用例の提示というべきものであるから、これを参酌し検討することは許されず、被告の主張は、到底採用することができない。
したがって、引用例発明のガラス戸は、本願発明の伸縮自在の仕切り板とは異なるから、審決が、「引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”は、・・・即ち、縮めると、左又は右端にガラス戸を集めることになるものである。・・・引用例に記載された発明の“内外のガラス戸を左右に開閉自在とし・・・”は、本願発明の「各仕切り板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる」に相当する。」(審決書6頁2~17行)と認定したことは、誤りというほかない。
2 審決が、「引用例に記載された発明の“ブラインド”は、伸縮自在で、使用するときは伸ばして用いるものであることは明らかであるから、引用例に記載された発明の“・・・ブラインドを左右方向に寄せ集めることができる”は、本願発明の「各仕切り板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる」に相当する。」(審決書6頁8~17行)と認定したことは、当事者間に争いがなく、このことによれば、引用例発明のブラインドは、本願発明の仕切り板に相当するものと認められる。
しかし、前示のとおり、引用例発明におけるガラス戸は、本願発明の仕切り板に相当するものでなく、また、引用例(甲第3号証)の第4図によれば、引用例発明におけるブラインドは、1枚(1連)であると認められるのに対し、本願発明は、前示要旨記載のとおり、「枠内に嵌め込まれた仕切り板は複数枚とする」ものであり、そのことにより前示の作用効果を達成するものであるから、引用例発明のブラインドが本願発明の仕切り板に相当するとしても、1枚の仕切り板しかない引用例発明と複数枚の仕切り板を設けた本願発明とが相違することは、明らかといえる。
したがって、審決が、「本願発明と引用例に記載された発明とに構成において相違するところはない。」(審決書6頁18~19行)と判断したことは、誤りである。
以上のとおり、審決は、引用例発明の認定を誤り、その結果、本願発明との対比・判断も誤ったものであって、このことが審決の結論に重大な影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は、取消しを免れない。
3 よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)
平成7年審判第9292号
審決
兵庫県尼崎市塚口町4丁目6番地の15
請求人 藤原明
昭和61年特許願第126981号「建具」拒絶査定に対する審判事件(昭和62年12月10日出願公開、特開昭62-284877)について、次のとおり審決する。
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
Ⅰ. 本願発明の要旨
本願は、昭和61年5月30日の出願であって、その発明の要旨は、平成9年8月8日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認める。
「枠と該枠内に嵌め込まれた仕切り板とからなる建具であって、前記枠内に嵌め込まれた仕切り板は複数枚とすると共に各仕切り板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いることを特徴とする建具。」
Ⅱ. 当審の拒絶理由
これに対し、当審において平成9年5月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭52-175096号(実開昭54-100455号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
Ⅲ. 引用例記載の発明
そして、引用例には、
「(1)壁面に対して内外両面にガラス戸を設け、少くとも内側面ガラス戸を開閉自在とすると共に、前記内外両側面のガラス戸間の空気と液槽内の液体との間に熱良導体を介在させた構造を特徴とする二重窓。
……略……
(5)内外両側面のガラス戸の間にブラインドを具けた構造の第1項乃至第4項の何れかに記載した二重窓。」(実用新案登録請求の範囲)、
「第1図に示す如く10は壁面に嵌め込まれる窓枠であって、その採光部の内外両側面にガラス戸11、12を設けてほぼ気密状の構造とし、そしてその少くとも内側面は開閉自在なガラス戸11とする。」(明細書第3頁第4行~第7行)、
「本発明の第4実施例は、第4図に示す如く、内外両側のガラス戸11d、12dの間に例えば上下方向に又は左右方向へ寄せ集めたり、或は角度を変えるようにしたアルミニウム等の如き金属製のブラインド17dを設けたものである。」(同第4頁第20行~第5頁第4行)の記載があり、第1図には、左右に開閉するガラス戸11、12が記載されている。
以上の記載があることから、引用例には、
“窓枠と、該窓枠内に嵌め込まれた内外のガラス戸及びブラインドとからなる二重窓であって、窓枠内に嵌め込まれた内外のガラス戸を左右に開閉自在とし、ブラインドを左右方向に寄せ集めることができる二重窓”
が記載されているものと認められる。
Ⅳ. 対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、まず、引用例に記載された発明の“窓枠”は、本願発明の「枠」に相当し、引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”と“ブラインド”は、共に本願発明の「仕切板」に相当する。
そして、引用例に記載された発明の“二重窓”は、窓枠と、窓枠内に嵌め込まれた左右に開閉自在の内外のガラス戸とからなっているから、「可動の戸と建具枠で構成され、建築の開口部を開閉するもの」という「建具」の定義(株式会社彰国社発行、「建築大辞典<縮 板>」による。)に照らすと、本願発明の「建具」に相当する。
さらに、本願発明における「各仕切板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる」については、本願の明細書に、「各仕切り板2a、2b、2cは夫々、伸縮自在とする。そして、仕切り板2a、2b、2cのうち、使用するものは枠1内に伸ばして用いる。使用しない他のものは縮めて枠1内の一端に集める。」(第2頁第7行~第10行)の記載、及び「仕切り板2a、2b、2cのうち、使用しない仕切り板は折りたたみ式、スライド式等により縮め、左、右端に又は上、下端等、枠1の一端に集めるものである。」(同第2頁第15行~第17行)の記載があり、使用しないときはスライド式により縮めて枠の一端に集め、使用するときは枠内に伸ばして用いる伸縮自在の仕切り板が例示されている。
一方引用例に記載された発明の“内外のガラス戸”は、左右に開閉自在、即ち、本願発明について例示されたものと同様に左右にスライドさせるものであり、閉じた状態、即ち、窓枠内に伸ばされた状態のガラス戸をスライドさせて開ける、即ち、縮めると、左又は右端にガラス戸を集めることになるものである。また、引用例に記載された発明の“ブラインド”は、伸縮自在で、使用するときは伸ばして用いるものであることは明らかであるから、引用例に記載された発明の“内外のガラス戸を左右に開閉自在とし、ブラインドを左右方向に寄せ集めることができる”は、本願発明の「各仕切板の夫々を伸縮自在とし、使用しない仕切り板は縮めて前記枠内の一端に集めると共に使用する仕切り板を枠内に伸ばして用いる」に相当する。
そうすると、本願発明と引用例に記載された発明とに構成において相違するところはない。
Ⅴ. むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
平成9年11月25日
審判長 特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)